成人式の写真撮影で、 私はいつも「着物」だけを見ているわけではありません。 むしろ、 人と人のあいだに流れる時間を見ています。 この日も、 そんな時間が、静かに流れていました。 撮影の途中、 お父さんがふらっとスタジオに入ってきました。 娘さんの姿を見た瞬間、 「おお〜」と、思わず声が漏れる。 言葉を選ぶ前に、 喜びのほうが先に出てしまった、そんな声でした。 彼は撮影の横に腰を下ろし、 何も言わず、ただ娘さんを見つめていました。 時々、私の方を見て、 うれしそうに、うんうんとうなずく。 会話はなくても、 十分すぎるほど、気持ちは伝わってきました。 この女の子は、とても美人です。 モデルのような整った顔立ち。 でも、それ以上に印象的だったのは、 そのユーモアでした。 突然変顔をしてみんなを笑わせたり、 場の空気を一瞬で軽くしてしまう。 彼女は、 その場にいる人の緊張をほどく力を持っていました。 この日の撮影には、 ひとつの特別な意味がありました。 彼女が7歳のとき、 同じ部屋で、お父さんと並んで撮った写真。 畳の上に正座して、 親子で同じポーズをしている一枚です。 今回はその写真を、 20歳の成人式で再現することになりました。 実は彼女は、 昔バスケットボールで膝を痛めていて、 普段は床に座ることができません。 それでも彼女は、 この写真のために、畳に座りました。 「できるかどうか」よりも、 「やりたいかどうか」 彼女は自然に、そちらを選んだように見えました。 撮影が終わり、 立ち上がろうとしたとき。 彼女は一人では立ち上がれず、 お父さんがそっと手を差し出します。 二人で一緒に、ゆっくり立ち上がったあと、 一瞬、彼女の表情が少しだけ苦しそうになりました。 それを見て、 私たちも思わず息をのんだ、その直後。 彼女は急に、 とびきりの変顔をしてみせたのです。 心配して見守っていた私たちを、 一気に笑わせるために。 最後まで彼女は、 […]
